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ワールドツアーの光

出会い

「海藤との出会い。」

 アーティストに初めて会ったとき、大きな信頼や理解につながるような親近感をすぐに抱くことがある。海藤に出会った時も、私はそんなふうに感じた。
 日本でのコンサートツアーのため、統一感があり、しかも変化に富んだ、シンプルだけど効果的な舞台照明を求めていた。ちょうどその時、海藤の仕事が目に留まり、滞在していた東京のホテルのロビーで彼に会う手はずを整えた。通訳の到着が遅れ、私たちはなんとか会話をつなげて、こちらの要望の概要を伝えたり、デザインについての見解の一致点を探ったりしなければならなかった。しかし、通訳を介さなくても、私たちがきわめて近い考えをもっていることはすぐにわかった。彼が自分のアイディアを話す印象から、最終的には舞台設計の全てを彼に任せようという気になった。そんなふうに感じることはあまりないのだが、このときはその結果がどんなものであるかを確信することができたのだ。海藤はもちろん私の期待を裏切ることはなかった。
ーfrom David Sylvian / Light Composeより
David_Stage_plan.jpg2007年ワールドツアーのためのステージイメージ

STAGE LAYOUT.jpgデヴィッドから送られたバンドレイアウトイメージ

「ロイヤル・アルバート・ホールでの出来事。」

初めの頃のデヴィッドのツアーのうち、ロンドンはロイヤル・アルバート・ホールでやった公演の後、劇場で“アフタートーク&プチパーティ”みたいなものが行われました。僕はライティング・デザイナーという肩書きでそこにいたわけだけども、やはりアーティストとして扱われるんですね。日本ではどちらかというとまだ照明さんは“裏方”という意識が残っているような時で、劇場でこのようなコミュニケーションの時間を持つことはあまり一般的ではありませんでした。そのパーティーで僕は何人かのプロデューサー達と話すこととなり、「このステージの照明を考えたのは君か?、あれはどうやってるんだ?」「企業秘密です。」とか「誰のライブの照明ならやってみたいか?」「スティングやマドンナとかかな、、、」そんな会話をしたのを覚えています。このときの照明についてはこのページの下に写真を載せていると思うけど、「禅の心だ」と感想を述べられたのを覚えています。意識したわけでは全くないのだけど。
 どちらにせよ、このとき僕が思ったのはステージにおけるセットやライティングへの関心が高い人たちが多くいて、そしてこういう時間での“出会い”が、また人と人をつなげていくのだと。

"The World Is Everything" 
ワールドツアー

「ストックホルム〜オスロ、そしてコペンハーゲンへ。」

2007年9月7日、今回のワールドツアーの初日、ステージと照明のセッティングを行うためにスウェーデンはストックホルムに降り立ち、デビッドと劇場前で久しぶりの再会を果たしました。劇場脇には大型のキャンピングトレーラーと楽器車が駐車しており、後でツアーの照明オペレーターのマークから聞きましたが、朝9時頃から仕込みに入り、午後にはサウンドチェックやリハーサルを済まし、公演後撤収作業、そして夜中に次の公演地に出発するという、とてもタフな興行だったんです。
 翌日はオスロにて、そして3日目はコペンハーゲンの王立劇場(写真)にて行われました。ここは1874年にこけら落としが行われたというデンマーク最古の劇場で石造りの歌劇場です。王立ということもあってか、スタッフも楽屋入り口では守衛さんが関係者楽屋と連絡をとり、ドアの開閉ボタンを押してくれないと中に入れてもらえず、警備がしっかりとしたところでした。
 3日間同行したのは、各劇場によって今回考えた白い背景布と球体照明とのバランスや、劇情機材の有無による微修正をツアー同行の照明オペレーターのマークと確認し合うためでもありました。照明もそうですが、音響も毎回劇場が違うので苦労されていました。ツアーマネージャーがサウンドマンでもあり、先の公演のマネージメントやスタッフのお弁当代を配ったりしながらも、リハーサル時にはデヴィッドと細かい音響調整をするという、こちらもかなり忙しく動かれていました。

客席は3ヶ所の公演ともほぼ満席、スタンディングオベーションもあった。この夜、僕もデヴィッドの弟でドラマーのスティーヴたちとSHUSHI Roll レストランに行き、小規模にツアー始まりの成功を祝いました。
DSC_0156.psdWorld is Everything World Tour2007

DSC_0071.jpgRoyal Theater, Copenhagen

「海藤は光の建築家なのだ。」

 海藤は仕事に対して非常に真剣な態度で取り組む。
が、一方ユーモアがあり、心安く、また寛容な人柄から、堅苦しさを感じさせない人である。
  彼の仕事は、一見するとただシンプルに見えるのだが、実は奥が深い。そして複雑な問題を解く鍵のように、彼の作品は当を得ている。彼のデザインは当然のことのように見えてしまう危険性があるけれども、それは瞬時にしてまわりに溶け込んでしまうからなのだ。
 彼はまた、テクノロジーにたいへん魅力を感じているようだが、それに対する高度な見識と子供のような無邪気さを合わせもっている。彼の仕事は安らぎに満ちていて、とりわけ空間的な大きさ、空間や形の創造、手法の確かさといった意味において、建築学的な資質を持っている。海藤は光の建築家なのだ。
ーfrom David Sylvian/Light Composeより